特殊枠サヴィル・ロウ3番地 アップル・コア本社
ザ・ビートルズ、1969年1月30日 アップル本社屋上のルーフトップ・コンサート
1969年1月30日の昼、ザ・ビートルズはロンドンの自社ビルの屋上で、予告なしに演奏を始めた。4人がそろって人前で演奏したのは、これが最後になった。最後の曲は「Get Back」だった。
公演データ
| 公演日 | [29][20][22] |
|---|---|
| 会場 | サヴィル・ロウ3番地 アップル・コア本社(ロンドン) |
| 公演名 | ルーフトップ・コンサート [29][20][13] |
| 区分 | 特殊枠 |
| 終わった理由 | 解散 [10][9] |
| 出演 | John Lennon、Paul McCartney、George Harrison、Ringo Starr、Billy Preston [16][34][12] |
| 最後に演奏された曲 | 「Get Back」 [22][20] |
| 演奏曲数 | 10曲 |
| 映像化 | あり [6][38] |
アーティストについて
ザ・ビートルズは、ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターの4人による、イギリス・リヴァプール出身のバンドで、ヨーロッパ各地のクラブでの演奏で評判を得た[1]。1962年10月5日にはイギリスで最初のシングル「Love Me Do」を出し、全英チャートで17位まで上がった[2]。
米国では「I Want to Hold Your Hand」がチャートの1位になり、1964年2月9日にはテレビ番組『エド・サリヴァン・ショー』に初めて出演した。この日の番組を見たのは7300万人で、その夜テレビを見ていた米国人の6割を超える。スミソニアン誌は、当時もっとも多く見られたテレビ番組になったと書いている。演奏したのは、「All My Loving」で始まり「I Want to Hold Your Hand」で締めくくる5曲だった[1]。
なぜ、これが最後なのか
ザ・ビートルズがツアーをやめたのは1966年の夏だ。6月30日からの3日間には日本武道館で5回公演し[3]、8月29日、米サンフランシスコのキャンドルスティック・パークでの公演が最後になった。締めくくりはリトル・リチャードの「Long Tall Sally」だった[4][5]。
ローリング・ストーン誌のロブ・シェフィールドによれば、客席には何も告げられなかったが、4人は最後だとわかっていた。自分たちの音も聞こえないスタジアムでの短いステージに疲れていた4人は、ツアーを離れ、1967年の『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』などを生み出していく[5]。
1969年1月、4人は2年以上ぶりのライブに向けて14曲の新曲を書き上げるセッションを始めた[6]。会場にはギザのピラミッドやサハラ砂漠、大型客船まで検討されたが、最後は自分たちのビルの屋上でやればいいという案に落ち着いた[7]。
屋上の演奏のあと、4人は最後に録音したアルバム『Abbey Road』を1969年9月26日に発表した[8]。同じ9月、レノンはほかの3人に「離婚」を切り出していたという。解散が公になったのは翌1970年4月10日で、マッカートニーが初のソロ・アルバムのプレスリリースで、ビートルズとして活動する予定はないと明かした[9][10]。
屋上の演奏は、最後の公演として告知されたものではない。4人で人前に立った最後になったのは、結果としてのことだ[11]。このため当サイトでは「特殊枠」として扱う。
この日について伝えられていること
1969年1月30日の昼どき、4人は冷たい風の吹く、ロンドン・サヴィル・ロウ3番地のアップル・コア本社の屋上に上がった[12][13]。建物は1733年ごろの邸宅で、登録建造物になっている[14]。演奏は予告なしで[15]、キーボードにはハリスンが誘ったビリー・プレストンが加わった[12][16]。4月に出たシングル「Get Back」は「ザ・ビートルズ・ウィズ・ビリー・プレストン」名義で、ビートルズが望んでほかのアーティストの名前を並べた唯一のシングルだ[17]。
アップルの米国部門を率いたケン・マンスフィールドによれば、4人の間には緊張があり、屋上へ出ないまま終わりかけたと聞いたが、演奏が始まると昔のビートルズだったという[18]。
演奏したのは5曲で、テイクは計9回[18][19]。「Get Back」を3回、「Don't Let Me Down」と「I've Got A Feeling」を2回ずつ演奏し、テープ交換の合間にはイギリス国歌「God Save The Queen」の短いジャムも入った[20]。演奏時間は42分とされることが多く[18][21]、公式音源の収録時間は約40分だ[20]。
通りからは誰が演奏しているのか見えなかったが、音は届き、交通は乱れた[18]。当時19歳の巡査だったレイ・ダッグによれば、演奏が始まって数分のうちに約30件の苦情が寄せられた。警官に促されたスタッフのマル・エヴァンズがレノンとハリスンのアンプの電源を切ったが、マッカートニーとスター、プレストンは演奏を続けたという[19]。最後に演奏されたのは、この日3回目の「Get Back」だった[22][20]。演奏を終えたレノンはグループを代表して礼を述べ、オーディションに受かっているといいが、と冗談で締めくくった[16][11]。
この公演が残したもの
屋上の録音のうち「I've Got A Feeling」「One After 909」「Dig A Pony」は、アルバム『Let It Be』に収められた[12]。映画『Let It Be』に使われたのは演奏のうち21分で[7]、映画は1971年のアカデミー賞で歌曲・編曲賞を受けた[23]。
屋上の演奏は、のちのミュージシャンにも引用されてきた。1987年3月27日、U2はロサンゼルスの建物の屋上で「Where the Streets Have No Name」のビデオを撮影した。監督が狙ったのはビートルズ最後の公の演奏へのオマージュで、このときも最後は警察が発電機のヒューズを抜いた[24][25]。2009年にはマッカートニー自身がニューヨークのエド・サリヴァン・シアターのひさしの上で「Get Back」などを演奏し、ローリング・ストーン誌はサヴィル・ロウの屋上を思い出させると伝えた[26]。
50周年の2019年1月30日には、未公開映像を使ったピーター・ジャクソン監督の新作が発表された[27]。2021年11月にディズニープラスで配信された『ザ・ビートルズ:Get Back』で、屋上の演奏は初めてノーカットで公開された[28][21]。2022年1月には演奏全体の音源が配信され[20][13]、屋上の演奏をまとめた映画もIMAXで上映された[29]。日本では2月9日から全国39館で公開されている[30]。
ジャクソンが屋上の映像から取り出したレノンの歌声は、ステージにも戻った。2022年4月に始まったマッカートニーのツアー「Got Back」では、その声と「I've Got A Feeling」を歌い交わす演出が加わり[31][32]、6月のグラストンベリー・フェスティバルでも披露された[33]。数十年にわたって見られなかった1970年の映画『Let It Be』も、ジャクソンの会社による修復を経て、2024年5月8日にディズニープラスで配信された[34][35]。
予告なしの40分あまりは、半世紀を経て全編が公開され、マッカートニーのステージにまでつながっている。
- 活動期間(1962年〜1969年1月30日)
- ラストライブ
- シングル「Get Back」発売。名義は「ザ・ビートルズ・ウィズ・ビリー・プレストン」。
- レノンがほかの3人に「離婚」を切り出す(公表はされず)。
- 最後に録音したアルバム『Abbey Road』発売。
- マッカートニーが初のソロ・アルバムのプレスリリースで、ビートルズとして活動する予定はないと明かす。1年後
- 映画『Let It Be』公開。屋上の演奏のうち21分が使われる。1年後
- アルバム『Let It Be』発売。屋上の演奏から「I've Got A Feeling」「One After 909」「Dig A Pony」を収録。1年後
- 映画『Let It Be』がアカデミー賞の歌曲・編曲賞(Original Song Score)を受賞。2年後
- ジョン・レノンが死去。11年後
- U2がロサンゼルスの建物の屋上で「Where the Streets Have No Name」のビデオを撮影。ビートルズの屋上演奏へのオマージュ。18年後
- ジョージ・ハリスンが死去。32年後
- マッカートニーがニューヨークのエド・サリヴァン・シアターのひさしの上で演奏し、「Get Back」も歌う。40年後
- 屋上の演奏から50年の日に、ピーター・ジャクソン監督による新しい映画の制作が発表される。50年後
- ドキュメンタリー『ザ・ビートルズ:Get Back』がディズニープラスで配信開始(27日まで3日連続)。屋上の演奏が初めてノーカットで公開される。52年後
- 屋上の演奏の全編を新たにミックスした音源『The Beatles: Get Back-The Rooftop Performance』が配信される。53年後
- 53周年の日に、映画『The Beatles: Get Back – The Rooftop Concert』が米英のIMAXで上映される(日本では2月9日〜13日、邦題『ザ・ビートルズ Get Back:ルーフトップ・コンサート』)。53年後
- マッカートニーのツアー「Got Back」が米スポケーンで開幕。屋上の映像から取り出したレノンの歌声と「I've Got A Feeling」を歌う演出が加わる。53年後
- 『ザ・ビートルズ:Get Back』の国内盤Blu-ray・DVDコレクターズ・セット発売(米国では7月12日)。53年後
- ビートルズ最後の新曲とされる「Now and Then」発表。ジャクソンがデモ録音からレノンの声を取り出す。54年後
- ジャクソンの会社が修復した映画『Let It Be』がディズニープラスで配信開始(日本題『ザ・ビートルズ: Let It Be』)。55年後
本編 アンコール 最後の曲
- Get Back
- Get Back
- Don't Let Me Down
- I've Got A Feeling
- One After 909
- Dig A Pony
- God Save The Queen
- I've Got A Feeling
- Don't Let Me Down
- Get Back
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The Beatles: Get Back
ピーター・ジャクソン監督のドキュメンタリー(全3話)。屋上の演奏をノーカットで収める。ディズニープラスで配信(日本題『ザ・ビートルズ:Get Back』)[^src_realsound_getback_2021]
ザ・ビートルズ:Get Back Blu-ray コレクターズ・セット
全3話を収めた3枚組。屋上の演奏もノーカットで収録。日本語字幕つき[^src_tower_getback_bluray_2022]
ザ・ビートルズ:Get Back DVDコレクターズ・セット
全3話を収めた3枚組。42分間の屋上の演奏もノーカットで収録[^src_tower_getback_dvd_2022]
The Beatles: Get Back-The Rooftop Performance
公式の音源。屋上の演奏をテイクごとに10トラックで収める(ステレオ/ドルビーアトモス)。各音楽配信サービスで配信[^src_umg_rooftop_2022]
Let It Be
1970年公開の映画の修復版。屋上の演奏のうち21分が使われている[^src_nme_rooftop_2019]。ディズニープラスで配信(日本題『ザ・ビートルズ: Let It Be』)[^src_phileweb_letitbe_2024]
出典
- On This Day in 1964, 73 Million Americans Tuned in to Watch the Biggest Act in Music — Smithsonian Magazine (Sarah Holzmann), 2025年2月9日
- When the Beatles Released Their First Single, 'Love Me Do' — Ultimate Classic Rock (Dave Lifton), 2015年10月5日
- 〈1966年の今日〉6月29日 : ビートルズが来日 — nippon.com
- Candlestick Park hosted final Beatles tour stop 50 years ago today — San Francisco Chronicle, 2016年8月29日
- The Night the Beatles Made a Glorious Final Stand as a Live Band — Rolling Stone Australia (Rob Sheffield; republished from Rolling Stone US), 2026年8月30日
- The Beatles: Get Back — thebeatles.com
- Pyramids, pantyhose and cool cops: the story behind The Beatles' final gig on the Apple rooftop — NME (Mark Beaumont), 2019年1月31日
- Abbey Road — thebeatles.com
- The Inside Story of the Beatles' Messy Breakup — Smithsonian Magazine (Tim Riley; republished from The Conversation), 2020年4月10日
- 50 Years Ago Today: The Beatles Officially Split — Relix (Raffaela Kenny-Cincotta), 2020年4月10日
- ‘Get Back’: Beatles’ Rooftop Concert Finally Gets a Digital Release — Rolling Stone Australia (Rob Sheffield), 2022年1月28日
- Which songs did The Beatles play at their famous “rooftop” concert? — Radio X (Martin O'Gorman), 2026年5月11日
- THE BEATLES(ザ・ビートルズ)、最後のライヴ「ルーフトップ・コンサート」音声を新規リミックスした完全版『The Beatles: Get Back-The Rooftop Performance』全世界配信開始 — タワーレコード オンライン, 2022年1月28日
- 3, SAVILE ROW W1 (List Entry Number 1236103) — Historic England
- ザ・ビートルズ Get Back:ルーフトップ・コンサート — 映画ナタリー
- Remembering The Beatles' Last Performance — NPR (All Things Considered), 2019年1月30日
- Get Back — thebeatles.com
- The Beatles' historic final concert held on rooftop 50 years ago — CBS News (Jim Axelrod), 2019年1月30日
- Does the policeman who shut down the last ever Beatles gig have any regrets? — Gold Radio, 2022年1月5日
- ‘The Beatles: Get Back-The Rooftop Performance’ Complete, Newly Mixed Audio To Debut For Global Streaming — Universal Music Enterprises (UMe), 2022年1月27日
- 『ザ・ビートルズ:Get Back』予告編&キービジュアル公開 ラストライブの場面写真も — Real Sound, 2021年10月19日
- What was the last song The Beatles played live? — Far Out Magazine (Will Howard), 2024年12月17日
- The 43rd Academy Awards | 1971 — Academy of Motion Picture Arts and Sciences (oscars.org)
- Flashback Monday: U2 Performs On A Roof In Downtown L.A. — LAist (Sharon Knolle), 2013年9月22日
- Remembering U2’s Where the Streets Have No Name, 30 years later — The Globe and Mail (Marsha Lederman), 2017年
- Paul McCartney Stuns Manhattan With Set on Letterman’s Marquee — Rolling Stone, 2009年7月16日
- The Beatles have announced a new film project using never-released footage — Gold Radio, 2019年1月30日
- The Beatles: Get Back to Debut on Disney+ This Thanksgiving Holiday — D23 (Disney; Zach Johnson), 2021年6月17日
- Celebrating The Beatles Rooftop Performance, IMAX Screenings — thebeatles.com, 2022年1月
- ビートルズのラストライブがIMAX上映。2月9日から5日間限定 — AV Watch(Impress), 2022年2月1日
- Paul McCartney Performs Virtual Duet With John Lennon at ‘Got Back’ Tour Kickoff — Loudwire (Joe DiVita), 2022年4月30日
- Paul McCartney ‘duets’ with John Lennon on first night of new world tour — Rolling Stone UK (Sam Moore), 2022年4月29日
- Paul McCartney ‘duets’ with John Lennon and Bruce Springsteen at Glastonbury — Gold Radio, 2022年6月26日
- “LET IT BE” – AT LAST — thebeatles.com, 2024年4月14日
- 映画『ザ・ビートルズ: Let It Be』が50年以上の時を経て復活。Disney+にて5/8から独占配信 — PHILE WEB, 2024年4月19日
- Let It Be — thebeatles.com
- The Beatles to release final song that includes John Lennon's vocals — CBC Music, 2023年10月26日
- ザ・ビートルズ:Get Back Blu-ray コレクターズ・セット — タワーレコード オンライン
- John Lennon death: Beatles fans, Yoko Ono, bandmates mark 40 years since musician died — Global News (The Associated Press), 2020年12月8日
- GEORGE HARRISON RIP — NME, 2001年11月30日
- ザ・ビートルズ:Get Back DVDコレクターズ・セット — タワーレコード オンライン
- The Beatles: Get Back Docuseries Available On Blu-ray™ And DVD July 12 — thebeatles.com, 2022年7月12日
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