ラストライブとして行われたウェンブリー・スタジアム

ワム!、1986年6月28日 ウェンブリー・スタジアムの解散コンサート「The Final」

1986年の初めに解散を発表したワム!は、6月28日、ロンドンのウェンブリー・スタジアムで、7万2000人を前に解散コンサート「The Final」を開いた。ともに23歳のジョージ・マイケルとアンドリュー・リッジリーのステージにはエルトン・ジョンとサイモン・ル・ボンが加わり、最後の曲はアンコールの「I'm Your Man」だった。

ピンクがかった壁の前で、笑顔で並ぶ3人。左がジョージ・マイケル、中央がルイーズ・パランカー、右がアンドリュー・リッジリー
参考写真1984〜85年ごろ。左からジョージ・マイケル、ルイーズ・パランカー、アンドリュー・リッジリー。写真: Louise Palanker / CC BY-SA 2.0

公演データ

公演日 [2][15][7][1]
会場ウェンブリー・スタジアム(ロンドン)
公演名ザ・ファイナル [2][15][24]
区分ラストライブとして行われた
ラストライブになった理由解散 [9][2][21][3]
出演George Michael、Andrew Ridgeley、Elton John、Simon Le Bon [2][12][15][4]
観客数72,000人 [2][15][1][4]
最後に演奏された曲「I'm Your Man」 [15][12][4][6]
演奏曲数21曲セットリストを見る ↓
映像化なし [20]

アーティストについて

ワム!は、ジョージ・マイケルとアンドリュー・リッジリーの2人組だ。1975年にイングランドの学校で出会った2人は、1981年にワム!を結成した[1][2]。リッジリーはギターを受け持ち[3]、創作の主導権はジョージが握ると早くから2人で決めていた[4]。

1982年にデビュー曲「Wham Rap! (Enjoy What You Do)」を出し[1]、同じ年の「Young Guns (Go for It!)」が全英3位になった。1984年の「Wake Me Up Before You Go-Go」(邦題「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ」[5])が初めての全英1位で、アルバム『Fantastic』『Make It Big』もともに1位になった[6]。

1985年4月には北京と広州で公演し、中国で公演した最初の西側のポップ・グループになった[7]。日本では1984〜85年にマクセルのカセットテープのテレビCMに出演し、1985年に最初で最後の来日公演を行っている[8]。

なぜ、これが最後だったのか

解散は1986年の初めに、ジョージ・マイケルが発表した。3月1日に出演したトーク番組『Aspel & Company』で、ジョージは、4年前にバンドを組んだときに目指したことはほぼ成し遂げたと話した。2人の間に亀裂はまったくなく、うまくやればポップ史上いちばん円満な解散になるはずだとも語っている[9]。同じ年の『Rock!』誌には、2人とももう18歳ではない、好調なうちにやめることにしたと話している[9]。

リッジリーも、終わりは初めから決まっていたようなものだったと振り返る。2023年のBBCのインタビューでは、ワム!の形にとどまっていたら、ソングライターとしてのジョージの成長を妨げただろうと話し、2人ともワム!という枠には収まらなくなっていたと語った[10]。2019年の回想録には、ワム!が終わったのは、ひとつには、自分たちの若さより長く続くことができなかったからだと書いている[4]。

ワム!のラストライブは、ただ1回の公演と決まった。ジョージは解散を語った時点で、この夏にウェンブリー・スタジアムで演奏したいと話していた[9]。リッジリーは、世界中のファンにさよならを言うツアーをしたかったと語る一方で、1回の公演に絞るというジョージの考え方は理解していたという[11][10]。最後のシングル「The Edge of Heaven」にはエルトン・ジョンがピアノで加わり[12]、公演の週(6月22〜28日)の全英シングルチャートで1位になっていた[13]。

この日について伝えられていること

会場のウェンブリー・スタジアムは、1924〜25年の大英帝国博覧会の中心として1923年に建てられた初代のスタジアムだ[14]。前年の1985年にはライヴ・エイドの会場になり[14]、ジョージはそこでエルトン・ジョンのステージに招かれて歌っていた[12]。

1986年6月28日、その会場に7万2000人が集まった[2][15]。ジョージ・マイケルとアンドリュー・リッジリーは、ともに23歳だった[15]。催しは8時間に及び[11][16]、1985年の中国公演を記録した映画『Foreign Skies』も上映された[7]。ワム!がステージに立ったのは、そのうち約2時間だった[11]。

当日の曲目と曲順を一覧で伝えた報道は見つかっていない。ファンが編集するsetlist.fmと、Wikipediaによれば、2人は「Everything She Wants」(邦題「恋のかけひき」[5])で始め、全21曲を演奏した[17][18]。リッジリーも回想録で、「Careless Whisper」「Freedom」などのヒット曲を最後にもう一度演奏したと振り返っている[4]。バックシンガーのペプシとシャーリーも、数曲で2人と並んだ[15][4]。

途中では、2人の友人のエルトン・ジョンが予告なしに登場した[2][12]。ロナルド・マクドナルドのメイクと衣装でピアノを弾き、ジョージが1973年のエルトンの曲「Candle in the Wind」を歌った[12][15]。

最後の曲は、アンコールの「I'm Your Man」だった。エルトン・ジョンがふたたび加わり[12]、デュラン・デュランのサイモン・ル・ボンもステージに上がってバックコーラスを歌った[15][4]。リッジリーは回想録で、このアンコールを「アナーキー」だったと書いている[4]。終演のとき2人は抱き合い、ジョージは歓声に負けないよう声を張り上げて、きみがいなければ、これはできなかったとリッジリーに伝えたという[19]。

この公演が残したもの

この公演の公式の映像や音源は出ていない。リッジリーは2019年、出してほしい気持ちはあるが、公演は放送用に撮影・録音されたことがなく、ジョージは人前に出せる出来ではないと考えていたと話した[20]。同じ場でリッジリーは、最後の公演でツアーを回り、世界中のファンに別れを告げるべきだった、1回で終えたのは世界で応援してくれたファンへのちょっとした裏切りだったと感じている、とも語った[20]。

公演と同じ名前のヒット曲集『The Final』は、1986年7月に全英アルバムチャートで最高2位になったが[6]、公演の録音ではない[5]。

2人はその後、別々の道を歩んだ。1991年1月、ブラジルの第2回ロック・イン・リオに出演したジョージ・マイケルのステージにリッジリーが現れ、2人で歌った[21][19]。これはジョージ・マイケルの公演で、ワム!として再び活動したわけではない。ジョージ・マイケルは2016年12月25日、53歳で亡くなった[22]。

ワム!の曲は、その後も聴かれ続けている。1984年に2位にとどまった「Last Christmas」は2021年に初めて全英1位になり、2023年と2024年にはクリスマスの週の1位になった[6][23]。日本でもオリコンの週間洋楽シングルチャートで、1980〜90年代に通算26週1位を記録している[8]。2020年には、マクセルのCM映像も収めた『ジャパニーズ・シングル・コレクション -グレイテスト・ヒッツ-』が出た[8]。2023年7月5日には、2人の歩みを本人たちの語りでたどるNetflixのドキュメンタリー『WHAM!』が全世界で配信された[2][24]。

映像にも音源にも公式には残らなかった1986年6月28日のウェンブリーは、リッジリーの回想録やインタビューを通して、今も語られている。

セットリスト

21曲 要確認[17][18][4][12]
1. Everything She Wants2. Club Tropicana3. Heartbeat4. Battlestations5. Bad Boys6. If You Were There7. The Edge of Heaven8. Candle in the Wind9. Credit Card Baby10. Like a Baby11. Love Machine12. Where Did Your Heart Go?13. Why14. Last Christmas15. Wham Rap! (Enjoy What You Do)16. A Different Corner17. Freedom18. Careless Whisper19. Young Guns (Go for It!)20. Wake Me Up Before You Go-Go21. I'm Your Man

本編 アンコール カバー 最後の曲

  1. Everything She Wants · 1曲目。曲目と曲順は、ファンが編集する setlist.fm と Wikipedia による。当日の曲目を一覧で伝えた報道は見つかっていない
  2. Club Tropicana
  3. Heartbeat
  4. Battlestations
  5. Bad Boys
  6. If You Were There · カバー: The Isley Brothers
  7. The Edge of Heaven · 最後のシングル。公演の週の全英シングルチャートで1位
  8. Candle in the Wind · カバー: Elton John · エルトン・ジョンがピアノで共演
  9. Credit Card Baby
  10. Like a Baby
  11. Love Machine · カバー: The Miracles
  12. Where Did Your Heart Go? · カバー: Was (Not Was)
  13. Why · カバー: Carly Simon
  14. Last Christmas
  15. Wham Rap! (Enjoy What You Do)
  16. A Different Corner
  17. Freedom
  18. Careless Whisper · setlist.fm は、この曲からの3曲を1回目のアンコールとしている
  19. Young Guns (Go for It!)
  20. Wake Me Up Before You Go-Go
  21. アンコールI'm Your Man · アンコール。最後に演奏された曲で、エルトン・ジョンとサイモン・ル・ボンが加わった。setlist.fm は2回目のアンコールとしている

もうひとつの終演を読む

グループの幕引きには、それぞれの形があります。

年表活動期間・ラストライブ・その後の出来事を、出典で確認できたものだけ並べています。
19902000201020201986年7月 公演と同じ名前のベスト盤『The Final』が全英アルバムチャートに入り、最高2位になる。1991年1月 ブラジルの第2回ロック・イン・リオに出演したジョージ・マイケルのステージに、アンドリュー・リッジリーが加わって一緒に歌う(ジョージ・マイケルの公演)。2016年12月25日 ジョージ・マイケルが53歳で死去。2019年10月13日 アンドリュー・リッジリーがチェルトナム文学祭で回想録『Wham! George & Me』について話し、最後の公演は放送用に撮影・録音されなかったと語る。2020年11月11日 日本で『ジャパニーズ・シングル・コレクション -グレイテスト・ヒッツ-』(CD+DVD)が出る。DVDに1984〜85年のマクセルのテレビCMを収める。2021年 「Last Christmas」が初めて全英1位になる。2023年7月5日 Netflix のドキュメンタリー『WHAM!』が全世界で配信される。2023年7月7日 シングル集『The Singles: Echoes From The Edge Of Heaven』が出て、全英アルバムチャートで最高2位になる。2023年12月 「Last Christmas」が全英のクリスマス・チャートで1位になる(2024年も1位)。1986年6月28日200020201986年7月 公演と同じ名前のベスト盤『The Final』が全英アルバムチャートに入り、最高2位になる。1991年1月 ブラジルの第2回ロック・イン・リオに出演したジョージ・マイケルのステージに、アンドリュー・リッジリーが加わって一緒に歌う(ジョージ・マイケルの公演)。2016年12月25日 ジョージ・マイケルが53歳で死去。2019年10月13日 アンドリュー・リッジリーがチェルトナム文学祭で回想録『Wham! George & Me』について話し、最後の公演は放送用に撮影・録音されなかったと語る。2020年11月11日 日本で『ジャパニーズ・シングル・コレクション -グレイテスト・ヒッツ-』(CD+DVD)が出る。DVDに1984〜85年のマクセルのテレビCMを収める。2021年 「Last Christmas」が初めて全英1位になる。2023年7月5日 Netflix のドキュメンタリー『WHAM!』が全世界で配信される。2023年7月7日 シングル集『The Singles: Echoes From The Edge Of Heaven』が出て、全英アルバムチャートで最高2位になる。2023年12月 「Last Christmas」が全英のクリスマス・チャートで1位になる(2024年も1位)。1986年6月28日
  1. 活動期間(1981年〜1986年6月28日)
  2. ラストライブ
  3. 公演と同じ名前のベスト盤『The Final』が全英アルバムチャートに入り、最高2位になる。
  4. ブラジルの第2回ロック・イン・リオに出演したジョージ・マイケルのステージに、アンドリュー・リッジリーが加わって一緒に歌う(ジョージ・マイケルの公演)。5年後
  5. ジョージ・マイケルが53歳で死去。30年後
  6. アンドリュー・リッジリーがチェルトナム文学祭で回想録『Wham! George & Me』について話し、最後の公演は放送用に撮影・録音されなかったと語る。33年後
  7. 日本で『ジャパニーズ・シングル・コレクション -グレイテスト・ヒッツ-』(CD+DVD)が出る。DVDに1984〜85年のマクセルのテレビCMを収める。34年後
  8. 「Last Christmas」が初めて全英1位になる。35年後
  9. Netflix のドキュメンタリー『WHAM!』が全世界で配信される。37年後
  10. シングル集『The Singles: Echoes From The Edge Of Heaven』が出て、全英アルバムチャートで最高2位になる。37年後
  11. 「Last Christmas」が全英のクリスマス・チャートで1位になる(2024年も1位)。37年後

このリンクから商品を購入されると、当サイトに紹介料が支払われることがあります。 詳しく

  • The Final

    The Final

    CD · 発売 2004年2月18日 · 品番 MHCP-170

    公演と同じ名前の1986年のベスト盤(2004年の国内盤CD)。公演の録音ではなく、「Wham Rap!」から最後のシングル「The Edge of Heaven」までの14曲を収める。

  • ジャパニーズ・シングル・コレクション -グレイテスト・ヒッツ-

    ジャパニーズ・シングル・コレクション -グレイテスト・ヒッツ-

    CD / DVD · 発売 2020年11月11日 · 品番 SICP-31384/5

    本文で触れた、2020年に日本で出たシングル集(CD+DVD)。DVDには1984〜85年のマクセルのテレビCMも収められている。

Supported by Rakuten Developers

出典

  1. 10 Surprising Facts About Wham! — Mental Floss (Kenneth Partridge), 2023年9月24日 (確認日 2026-10-15)
  2. デビュー40周年を記念して、<ワム!>の長編ドキュメンタリー作品がNetflixで7/5に配信開始!シングル・コレクションも8形態で7/7リリース。 — ソニーミュージック, 2023年4月27日 (確認日 2026-10-15)
  3. Wham! guitarist Andrew Ridgeley laughs off 'sidesplitting' reunion rumours — NME (John Earls), 2014年8月2日 (確認日 2026-10-16)
  4. Wham! The inside story — YOU (South Africa) via PressReader, 2019年11月21日 (確認日 2026-10-15)
  5. Wham!/ザ・ファイナル — タワーレコード オンライン(商品ページ、CD MHCP-170) (確認日 2026-10-16)
  6. WHAM! songs and albums | full Official Chart history — Official Charts (確認日 2026-10-15)
  7. If You Were There: Wham! in China — University of Stirling Archives (Culture on Campus), 2012年7月20日 (確認日 2026-10-16)
  8. ワム!初来日公演35周年を記念して、懐かしのマクセル カセットテープTV-CM映像公開! — ソニーミュージック, 2020年11月11日 (確認日 2026-10-16)
  9. Nearly 40 Years Ago, George Michael Began 'Most Amicable Split in Pop History' From Wham! Bandmate — American Songwriter (Melanie Davis), 2025年2月28日 (確認日 2026-10-15)
  10. Andrew Ridgeley Shares Regrets About Wham! Not Playing a Farewell Tour — American Songwriter (Alli Patton), 2023年6月29日 (確認日 2026-10-15)
  11. The would-be Wham! shows they regretted not playing: “A final tour to say goodbye to our fans” — Far Out Magazine (Lauren Hunter), 2025年9月28日 (確認日 2026-10-15)
  12. In Honour of George Michael (1963-2016) — eltonjohn.com, 2016年12月30日 (確認日 2026-10-15)
  13. Official Singles Chart Top 40 on 22/6/1986 (22 June 1986 - 28 June 1986) — Official Charts (確認日 2026-10-15)
  14. The original Wembley Stadium — The London Archives (Kevin Sheahan), 2025年7月31日 (確認日 2026-10-15)
  15. June 28 in Music History: Wham! played their farewell concert — The Current (Minnesota Public Radio), 2026年6月28日 (確認日 2026-10-15)
  16. Everything you need to know about Wham! — Magic Radio (Natalie Rees), 2026年6月15日 (確認日 2026-10-15)
  17. Wham! Setlist at Wembley Stadium, London, England (June 28, 1986) — setlist.fm (確認日 2026-10-15)
  18. The Final (concert) — Wikipedia(英語) (確認日 2026-10-15)
  19. Rock and Roll Book Club: Andrew Ridgeley writes about his years in Wham! with George Michael — The Current (Jay Gabler), 2019年11月 (確認日 2026-10-16)
  20. Andrew Ridgeley says he fears for X Factor contestants — Press and Journal (Press Association), 2019年10月13日 (確認日 2026-10-16)
  21. Nudez, lágrimas e declarações de amor – dez momentos inesquecíveis do Rock in Rio — Rolling Stone Brasil (Paulo Cavalcanti), 2017年9月14日 (確認日 2026-10-16)
  22. 『12月25日はなんの日?』ジョージ・マイケルの命日 没後4年 — Billboard JAPAN, 2020年12月25日 (確認日 2026-10-15)
  23. ワム!の「ラスト・クリスマス」、英クリスマスチャートで1位に 発売から39年 — CNN.co.jp, 2023年12月23日 (確認日 2026-10-15)
  24. Andrew Ridgeley Tells Us All About the Summer of Wham! — SPIN (Lily Moayeri), 2023年8月7日 (確認日 2026-10-16)
  25. England: 100 years since the opening of Wembley Stadium — StadiumDB.com (Kuba Kowalski), 2023年4月28日 (確認日 2026-10-15)

更新履歴

  • ページ作成